牛の肝臓

デーリーマン2014年11月号で、ケミン・ジャパンの安井さんが、肝臓の働きについて興味深いことを書かれています。牛の肝臓の働きを人為的に再現しようとするならば、さまざまな化学工場を建てねばならず面積は、富良野市と同程度の敷地が必要と言われているそうです。肝臓の働きには、主に二つあります。一つは栄養素の利用と生産、もう一つは解毒。特に分娩前から泌乳ピークにかけて、肝臓の重要性はさらに増していきます。妊娠後半の60日に胎児の60%が作られます。胎児や子宮に送る栄養を生産するために、肝臓はその前のステージに比べて1.4倍も働かなければなりません。また、分娩後は、泌乳が始まるために、栄養素の要求量も爆発的に増え、グルコース、アミノ酸の要求量もさることながら、脂肪酸の要求量は通常の500%にも達するそうです。

肝臓を健康に保つためにも、妊娠後期(乾乳期)から泌乳初期にかけては、最大の配慮をして飼養管理を実践しなければいけないことがわかります。

我々獣医師も、肝臓の負担をいかに軽減させ、牛を楽にさせてやるかを考えて治療する必要があります。

分娩後のケトーには、私は、いわゆる強肝剤と言われるものと、エネルギー補給のためのブドウ糖、そしてケトン体やアシドーシスに伴うエンドトキシンの血中濃度を少しでも薄めるために、高張食塩水を補液しています。この高張食塩水の補液を始めてからケトーシスの治りが、かなり良くなりました。また、高張食塩水には、胃腸を動かす作用もあるような気がします。これは私の想像ですが、腸も高張食塩水の影響で、水分が減ってしまいます。腸の働きは水分を吸収するのが仕事です、腸の働きを作動させるレセプターに、水分不足を感知するものがあれば、高張食塩水にも腸の蠕動運動を促進させる効果もあるのではないかと、想像しています。




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コメント: 2
  • #1

    キャリームラムラ (木曜日, 18 6月 2015 17:11)

    HSSをケトーシスの牛に投与する方法には興味をそそられますね。今度試してみます。

  • #2

    士別動物病院 田口 (金曜日, 19 6月 2015 14:24)

    いつもありがとうございます。
    本当にHSSいいですよ。
    是非、試してみて下さい。